便失禁を気にせずに
競技に集中できるようになりました
森井さんは、交通事故で脊髄を損傷しました。長らく排便管理に困っていたときに、先生からの紹介によって経肛門的洗腸療法に出会いました。
本格的に競技していく際にぶつかった壁
16歳の時にオートバイの事故で脊髄を損傷してしまって歩くことができなくなりました。急性期の病院から村山医療センターに転院をして、約半年間のリハビリを経て日常生活に戻って生活をしていました。その中でチェアスキーという競技に出会って、本格的に競技をしていく上で、壁にぶつかってしまったんです。その壁というのが、排便障害です。その排便障害を何とかしたいという思いで、いろんなことにチャレンジをしたんですけれども、なかなかうまくいかず先生に相談をさせていただいて、その中で経肛門的洗腸療法を紹介していただいたのが、洗腸を始めるきっかけです。
一番不安なのは、便失禁でした
競技中に便失禁をしてしまうと、その競技を継続することもできなくなってしまいますし、やっぱり周りに迷惑をかけてしまいます。僕自身、主戦場がヨーロッパの標高3000M級の山の中での大会だったり、トレーニングになるので、そこで便失禁をしてしまうというのは本当に致命的で、トレーニングやレースどころではなくなってしまったりするので、やっぱり排便コントロールはすごく重要です。
順行性洗腸など、色々な治療を試しました
まずはそれこそ下剤ですね。もちろん浣腸もやりましたし、あとは順行性洗腸です。最初の1年はすごくコントロールも良くて、短時間で出来て、楽だったんですけれども、激しいトレーニングをしたりするとそのポートの周りが炎症を起こしてしまって、痛みが出てしまったりして、なかなかうまくいかずにすごく悩みました。
最初は洗腸に対して半信半疑でした
逆行性洗腸を行う前に、まず色々検査をしていただいて、その後、村山医療センターのトイレで洗腸を試させていただきました。最初はお尻からお水を入れて、本当にスッキリ排便が出るのかなっていう正直半信半疑な部分があったんですけれども、びっくりするぐらい出たんです。水の勢いで出たのではなくて、その水が腸に入ってきたことによって、腸がちゃんとぜん動運動をして最初の勢いで出たものとは別に、残っている便を出してくれたっていう感覚がありました。なので例えば僕たちの場合、どうしても最初に凄く固くなった便が出てくるんですが、それだけではなくて、奥の方にある便まで出てきてくれて、且つ柔らかい便で出てくれたので、僕はすごくやってみてよかったです。
食事を楽しめるようになりました
今まで本当に色々な方法を試してきた中で、洗腸を行ったことによって、しっかり出せるというのは、やっぱりすごく大きかったなと思います。またしっかり出すことによってしっかり食べられるようになりますし、体調の方もすごく良くなるので、すごくよかったなと思います。
排便障害でお困りの方々へのメッセージ
僕も本当に悩んでいました。色々なことを試して、その中で僕は今、この洗腸にたどり着いたんですけれども、ぜひ皆さんもなかなか大変だと思いますが、1度挑戦をしてみると、気づくこともあります。まずチャレンジすることが大切だと思いますし、その中で僕自身が本当にやってよかったと思うので、自信を持ってお勧めできます。
インタビュアー :村山医療センター リハビリテーション科 植村 修 先生
プロフィール
森井 大輝
42歳/チェアスキーヤー、トヨタ自動車
/脊髄損傷
4歳からスキーを始める。高校2年生のときに交通事故で脊髄を損傷し、長野1998パラリンピックを病室で見てチェアスキーを始める。ソルトレイクシティ2002パラリンピックから北京2022パラリンピックまで6大会出場し、銀メダルを4度、銅メダルを3度獲得し、障がい者アルペンスキーワールドカップでは3度の総合優勝を果たした。また、世界選手権では4度の優勝を果たしている。