おしゃれして年相応の女の子の生活を
楽しんでいます

高室さんは、二分脊椎と骨疾患を患っており、車イスで生活されています。ご自身の排便管理への取り組みと変化について、お母さまと一緒にお話しいただきました。

対談動画:髙室瑠花さんとお母様×順天堂大学医学部附属順天堂医院 小児外科・小児泌尿生殖器外科 有井 瑠美 先生(インタビュアー)
<前編>(10:00)

髙室瑠花さんとお母様、主治医である順天堂大学医学部附属順天堂医院 小児外科・小児泌尿生殖器外科 有井瑠美先生との対談です。
髙室さんには現在の状況や洗腸時の工夫点をお話いただき、更にお母様からは髙室さんが洗腸を行ったことによる変化ついて、教えていただきました。

今までの排泄で困っていたこと

1番困っていたことは、外出先で便を漏らしてしまうことでした。あとは、体が不自由なので車イスからトイレに移乗することが大変でした。そのため、トイレに頻繁に行けない状況であり、行くこと自体が億劫になっていました。自己導尿をしていましたが、頻繁に導尿ができずに逆流症が悪化して、人工膀胱を造ることになりました。その後、排尿管理が落ち着くと排便関連のことがひどく目につくようになり、母に「排便をどうにかしたい」という相談を頻繁にするようになりました。

以前の排便管理の方法について

小さい頃の排便管理は、自己排便と浣腸でしたが、自分では便意がわからず、お腹が痛くなったり漏らしたりする感覚があったときには、出ても出なくてもトイレに行くようにしていました。また、時には家族に浣腸を頼んだりしていました。月に1回とか、多くて月に2-3回くらいは、浣腸で無理やり便を出していました。浣腸は自分では出来ないため、母親と小さい頃は父親にもお願いしていました。あとは摘便を行っていました。母にお風呂で体を洗ってもらうついでに摘便をしてもらっていました。大人になるにつれて自分で姿勢を調整出来るようになり、自分でも摘便ができるようになりました。ただ、摘便をしてもなかなか便が出ないため、掻き出すことで腸を傷つけてしまい、出血することがありました。

ずっと「洗腸は怖い」と思っていました

小学校低学年のときに、泌尿器科の看護師さんから小さい三角コーンのシリコンみたいなゴム製のものを見せてもらい、これでお腹の中を洗うと説明したもらったのが、初めて洗腸を知ったきっかけでした。それ(三角コーン)を見たときに、おしりが裂けるのではないかと、怖く思い、絶対洗腸だけはしたくないと思いました。なので、洗腸以外で排便管理をしようと、幼子心に思った記憶があります。

洗腸を始めようと思った心の変化

薬での排便管理では、便が週に1〜2回漏れてしまい、便失禁の回数が増えてきました。そのせいで、外で漏らしたらどうしようと外出が怖くなり仕事にも影響が出てしまいました。これでは自分の生活が出来なくなってしまうと考え、洗腸について色々調べ始めました。

ただ、ネットなどで洗腸を調べても自分が知りたい情報を探すのが難しかったので、最初は母に相談して、病院で相談することにしました。その時に、新しい洗腸機器を見せてもらい、以前のものとは違うことを知りました。自己導尿もしてきているので、カテ―テルやバルーンはよく使っていたので、バルーンカテーテルに馴染みがあり、今の製品をみて、これだったら使えるのではないかと安心しました。その後、実際に使い方の動画を見て、さらに理解が深まって、これなら自分でも出来そうだなと思いました。

最初のころの洗腸について

最初のころは、上手く水をお腹に入れることや、水を出しきることができず、洗腸が終わって1〜2時間経ってから、水が出てきてしまうことが頻繁に起こっていました。その度に「これをやっている意味があるのかな」と弱音を吐いていましたが、回数を重ねることで、自分の水を出し切る感覚がつかめてきました。半年くらいは試行錯誤をしていたと思います。1個の問題が片付いたら、他のことがまた目につき、上手くいかない原因をどのように解決していくのか、その都度先生の診察で相談しながら、1つ1つ対応していきました。

洗腸の工夫と排便日誌の活用

一番重視しているのは、お湯の温度を一定に保つことです。温度に関しては、時期によっては洗腸をしている最中に温度が下がってしまうため、ケトルにお湯をためて保冷バッグに包み、水の温度が下がってきたらお湯を補充するようにしています。

あとは洗腸の時間を守ることです。今は洗腸を18時に行うことにしています。洗腸の頻度は、2日に1回の実施を目標に、なるべく一定のペースでの実施を心がけています。

また、洗腸日誌の活用も工夫の1つになります。最初は洗腸日誌をつけていた方が良いと思います。なぜかというと日誌をつけることで、何が良くて、何が良くないかを視覚的に確認することができました。面倒ですが、伝えやすくなり、先生からのアドバイスをもらいやすくなります。

学校で渡す連絡帳みたいな気持ちで書くことで、気負わなくても出来ました。

洗腸をしてからは漏れがなくなり、気持ち的に楽になりました

洗腸をして、便を漏らさなくなったことが一番の変化です。体調が悪くお腹を壊したとき以外での漏れはなくなりました。洗腸する前は、身体を少し動かしたり、お腹に力をいれたりするだけで便が出てしまっていたので、そのような不慮の事故がなくなり、気持ち的にかなり楽になりました。洗腸をしてからは、便が漏れないため、便が付着した洗濯物を出す心苦しさからも解放されました。

身体的には、お腹の圧迫感がなくなりました。以前は胃が刺激されて気持ち悪くなることがあったのですが、今はそれがなくなりました。

お母さまの立場から
「洗腸をすることで、色々な相乗効果が生まれました」

洗腸をするようになって、トイレを使用する時間が計画的且つ明確になったので、その前に家族全員がトイレをすませておくなど、家族間の連携がとりやすくなりました。

また、以前は外出も嫌がって、留守番していると言っていたのが、最近は自分から買い物したいと言ってきてくれるようになりました。やはり漏れることがあると、着る洋服にも制限が出てきてしまうので、ジャージや着脱しやすい服を選んでいましたが、今は好きな服を着て、お化粧をするようになり、年相応の女の子の生活を楽しんでいます。

そして、排便管理の自立にも繋がっているように思います。「自分で出来るし何とかなる」という自信がつき、以前はかなり心配性でしたが、何か失敗しても特に気にせずに、色々なことを言ってもらいやすくなりました。

洗腸することで、色々な相乗効果が生まれていると感じています。

インタビュアー:順天堂大学医学部附属順天堂医院 小児外科・小児泌尿生殖器外科 准教授 有井 瑠美 先生

プロフィール

髙室 瑠花

25歳/多機能型事業所みんと 「就労継続支援B型」/二分脊椎

髙室さんは、多機能事業所みんとの「就労継続支援B型」にて就労の経験を重ねている。