排便後の身体がラクになり、
日中も動けるようになりました

土田さんは、今から19年程前に高所から転落して首の骨を骨折し、頸髄損傷になりました。両手両足が使えない状態のため、顎(あご)で操作する電動車いすを利用し日常生活を送っています。12年前から1人暮らしをはじめ、現在はお仕事として、困っている重度障害者のセルフヘルプに携わっておられます。脊髄損傷者、また排便の管理で悩む方のサポートをしたいという思いから、ご自身の体験についてお話下さいました。

対談動画:土田 浩敬さん×兵庫県立リハビリテーション中央病院 泌尿器科 乃美昌司先生(インタビュアー)(9:26)

土田 浩敬さんと主治医である兵庫県立リハビリテーション中央病院 泌尿器科 乃美昌司先生の対談です。
土田さんにはご自身の変化とともに、訪問看護師さんとの関りや臥位での洗腸の工夫など、具体的なご経験をお話いただきました。

今行っている社会活動(ぽしぶる/兵庫頸髄損傷者連絡会)のご紹介

今まで、自分が支えてもらうばかりの立場でしたが、自分がこうやって1人暮らしを行うことが出来るようになりましたので、自分がしてもらったような頸髄損傷者に対してのサポートをできるだけ行っていきたいなと思いました。自分なりの恩返しをしたいという思いもあって、情報誌の執筆、色々なイベント等の開催に関わらせてもらって、地域に密着して生活しています。具体的には、頸髄損傷者連絡会という同じ頸髄損傷者に対するセルフヘルプのグループがあり、情報誌の執筆活動を行っています。また、外になかなか出られないような頸髄損傷者に対してのサポートも行っています。真面目な社会活動だけではなく、食べ歩きとか旅行記なども書いています。

年齢とともに、徐々に排便にかかる時間が長くなってきました

僕が頸髄損傷者になったのは21歳の頃でした。その頃は、普通に浣腸を使って便が出ていましたが、年齢を重ねるごとに、30代を超えてから、腸の活動が20代の頃に比べたら悪くなってきて、便の出が良くない状況になりました。浣腸の本数も増えて、日常生活に少し支障をきたすようになってきました。浣腸の本数がだんだん増えてくると、排便後の体調がしんどくなってきました。そこで、どうにかならないかと少し悩んでいました。排便にかかる時間は1時間から1時間半ぐらいで、年々便の出が悪くなってきて時間がかかるようになってきました。

洗腸を知るきっかけは同じ頸髄損傷者との情報交換から

洗腸を知るきっかけになったのは、同じ頸髄損傷者のグループ内での情報交換の場です。

一度、洗腸をやってみないかとお勧めされました。それで自分もやってみようかなと思い、試してみました。

洗腸をすると排便後の身体がラクになりました

以前は浣腸の本数が増えたり、便を出した後がしんどくて日中の活動がままならないような状態で、ずっとベッド上で過ごしていたりしていました。あとは痔ができました。また、便が出きったにも関わらず失便をしていたので、何とかならないものかと思って洗腸を始めました。洗腸を始めてからは、失便はなくなりました。浣腸の本数も減って、今まで日中動けなかったのが、普段通り車椅子に乗るようになって、身体が楽になりました。

浣腸のみで排便を行っていた時は、昼からしんどくて、ベッド上でベッドをフラットにした状態で寝転んでおり、体調が少し良くて車いすに乗ったとしても、血圧が下がっていて車椅子を起こせなくてリクライニングをした状態というのが続いてました。その状態が本当になくなったというのは、自分の生活の中で変わった点だなと感じます。

自宅で洗腸をサポートしてくれる訪問看護師さんとの関り

今は自宅での洗腸については、週に2回訪問看護師さんに手伝ってもらっています。

中には洗腸を実施したことがない、どうすればよいのかわからないという看護師さんがいました。その場合は引き継ぎする時に、よくわかっている看護師さんから詳しい方法をレクチャーしてもらって、それから入ってもらう形になります。今のところそんなに難しいという感じがなくて、スムーズにできているのではないかと思います。

ベッド上で側臥位になって行う洗腸のポイントについて

洗腸はベッド上で側臥位になって、訪問看護師さんに排便を出してもらっています。

僕の場合、洗腸時に毎回1000mlくらい水を使うため、水を処理する吸水のフラットシートが必要です。以前の浣腸だったら1枚だったのが、現在4枚ぐらい使います(シーツが汚れないように2枚をおしりの下に敷き、もう1枚はビニール袋の中にいれておき、吸水が足りなくなるため、もう1枚追加します)。そこが以前と変わったところです。

多くの水を吸わせるため、多くのフラットシートが必要になってきます。(準備物品は写真参照)

洗腸をはじめようか悩んでいる方へのメッセージ

僕自身もですが、障害があるということに対して、今までの生活を変えることに、すごく抵抗がある方は多いと思います。ただ、思い切って変えてみるというのも、自分の生活をより良くするための一つの手ではないかなと感じました。やってみないとわからないというのが正直あると思うので、自分に合わなかったらまた戻せばいいというだけの話なので、実際にちょっとやってみて、自分の体調の変化とか、そういうのを実感されてから、またいろいろ考えてもらってもいいのかなと感じています。

インタビュアー:兵庫県立リハビリテーション中央病院 泌尿器科 乃美昌司先生

プロフィール

土田 浩敬

40歳/特定非営利活動法人ぽしぶる 理事/
兵庫頸髄損傷者連絡会 広報/
頸髄損傷(C4)

土田さんは、12年前から1人暮らしをされており、現在はお仕事として重度障害者のセルフヘルプに取り組まれている。